2021.11.12

ICONIC ALL-ROUNDER : ROLF BENZ 594 BY SEBASTIAN HERKNER 前編 (2020年インタビューより)

セバスチャン・ヘルクナーはアイコニックなデザインに精通しています。

世界を代表するインテリア見本市「メゾン・エ・オブジェ・パリ」で「Designer of the Year 2019」に輝いた彼がそれを証明した最近の作品が、ハイバックチェア「Rolf Benz 594」でしょう。

バランスのとれた湾曲した背もたれ、丁寧に張り込まれたシートシェルと心地よく柔らかなシートクッションを備えたこの快適なシーティング家具は座る人をやさしく抱擁しているかのように見えます。

 

私たちはドイツのオッフェンバッハ市にある彼のスタジオで、彼のインスピレーションの源、サステナビリティと現代における生活と仕事について伺いました。

セバスチャン、あなたは1年前に「Rolf Benz 909」ダイニングテーブルをデザインしました。そして、今回、新しいアームチェア「Rolf Benz 594」が発売されました。この開発には、どれくらいの時間がかかりましたか?そしてあなたの最大の挑戦は何でしたか?

私たちは、このアームチェアの開発に1年半をかけました。最大の課題は間違いなくアームチェアの特別なフォルムでした。当初から、アイコニックな椅子をつくることが目的で、Rolf Benzは個性がはっきりとしたユニークなデザインのハイバックチェアを望みました。このような課題には慎重に取り組むことが重要でした。私たちはまずデザインの絵を描くことから始め、いくつかのスケッチを作り、それからパソコンで作業を進めていきました。このプロセスで最も肝心だったのが、Rolf Benzの職人とプロトタイプを製作するスタッフとの綿密な打ち合わせでした。

最終デザインの完成までにはいくつかプロセスを踏みました。そこで多く登場したのが実際に制作されたプロトタイプです。その検証の間に私たちはデザインを調整し、時にはマーカーペンで修正部分を直接プロトタイプに記したこともあります。ここの部分は少し減らして、ここは角度を数度調整して、ここはラインに沿ってなどと・・・。もちろん、パソコンはすべての工程をサポートしてくれますが、最終的にはその作品を全ての感覚を研ぎ澄まして体験することが必要です。座ったり、周りから眺めたり、前にひざまずいたりと、さまざまな視点から確認をすることで、アームチェアの最終的なデザインに少しづつ近づけていくのです。これはとてもエキサイティングですが、非常に手間のかかるプロセスです。

このアームチェアはどのような空間、またはどのような用途に最も適していますか?

Rolf Benz 594は真のオールラウンダーです。このハイバックチェアは多彩な方法で、様々な空間とその用途に適応してくれます。例えば静かに読書をしたり、寛いだりすることができるシングル家具として、または、オープンオフィス、ホテルロビーなどで打合せ、交流会や雑談ができるコミュニケーションの場所としても最適です。

このアームチェアに最適な素材の組み合わせはどれですか?個人的にお気に入りはありますか?

それは難しい質問ですね、選択肢が多すぎます。

このアームチェアは、その人の好みに合わせて様々なスタイルを選ぶことができます。我が家はコンクリートが多いので、ここでは天然のオーク材をベースにしたフレームがとても見栄えがすると思います。

張り地には、質感に特徴があるものか、表面がふわっとしたものを選ぶでしょう。たとえばブークレ素材はとても気に入っています。またはベルベットだと更に肌ざわりも抜群ですので良いと思います。

作品のインスピレーションはどこから得ていますか?

インスピレーションを見つけることは自分にとっては簡単なことです。私は好奇心が強いので、よく周りを観察しています。様々な刺激を受けるには、常に自分がオープンでいなければなりません。それはいつでもどこでも起こり得るからです。普段の生活の中でも度々面白いことに気づきます。例えば咄嗟に発見する綺麗な色彩や珍しい素材の組み合わせなど。またスタジオでもインスピレーションを得ることができます。今までアーカイブした資料の中から、またはチームとの会話の中からも何かを発見することがあります。もちろん、美術館や旅先でもそうです。そして家の工事に来る職人の仕事を観察することも、製作の新しい解決策を模索するうえでためになることがあります。とにかくアンテナを張ることが大切なのです。

 

後編へつづく